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Novel pkmn 今日はえいえんの最初の日(シンオウでウォロと再会/完結)
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tt5 !+さよならの練習を(男主とオフェンスが過ごす真夏の話/現パロ/完結)
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さよならの練習を07

オフェンス
 {{ namae }}は弾かれたように駆け出した。ナワーブに嘘だと掴みかからなかったのは偉いと自画自賛する。それほどの余裕があるんだなとも何処か冷静な部分が自嘲した。今日に限ってアルコールは体内に入れていない。何時だって健康体だ。アルコールを入れておくべきだった。
 件の公園に行くと、そこは相変わらず子供たちの遊び場になっている。
 子供の笑い声。
 ボールの弾む音。
 セミの嘲笑。
 イヌの鳴き声。
 エンジンの音。
 子供の嗤笑。
 甲高い悲鳴。
 人々の冷笑。
 セミたちの揶揄。
 公園の入り口付近に錆びて片腕が取れた飛び出し坊やがぽつんと立っている。その傍らに交通事故の目撃情報を求める看板がある。それらの足元には、花束やらお菓子やらワンカップの中に入っている燃え尽きた線香がある。そのワンカップの中に、火のついていない線香花火が入っている。風に吹かれて、ゆぅらりと頭を揺らす。瞼の裏で線香花火が瞬いた。
 {{ namae }}は走った。逃げ出すようにしてただただ走った。脳裏に浮かぶ多くの人たち。皆スーツや制服、黒い服を着ている。百合の花。良い慣れない聖書の言葉。周囲の人たちは泣いていた。
 {{ namae }}が自室に駆けこむと、部屋の中は膨らんだゴム風船でいっぱいだった。ヘリウムで満たされたもの。人間の呼気で満たされたもの。好き勝手に浮かんだり倒れ伏したりしてごちゃごちゃと色鮮やかな風船が部屋を満たしている。窓の外でセミたちは{{ namae }}をがしゃがしゃと非難する。嘲笑う。哄笑する。喚く。罵倒する。
 {{ namae }}は顔を上げる。真っ赤な糸を結び付けた赤い風船は、椅子の背に括りつけられている。
 セミが一斉に口を噤んだ。{{ namae }}は意識的に息を吐く。アルコールの匂いがしない息が吐き出される。脳髄に、冷たいナイフでも刺し込まれた気持ちだった。{{ namae }}は自身の汗ばんだ掌をズボンに擦りつける。指先は酷く冷たい。浅い呼吸が何度も繰り返される。唇が、指先が、じん、と痺れを訴える。視界の端が暗くなる。立っていられなくて{{ namae }}は崩れ落ちた。
 酸素を吸い過ぎているのに脳味噌は酸素を求める。開きっぱなしの口の端から唾液が落ちる。ウィリアムの名前を叫ぶ。返事はない。ひょっこりと姿を現すことも、ない。それはそうだ、ウィリアムはもう既に死んでいる。夏休みに入る前に葬式だって執り行われた。そのことを{{ namae }}は漸く理解してしまった。把握してしまった。認識してしまった。
 うそだ、と呻くような声が響く。{{ namae }}は顔を上げ、地面を蹴って押し入れに飛びついた。押し入れを開けて、ウィリアムの姿を探す。半狂乱になりながら名前を叫んだ。だが返事はない。誰も現れない。押し入れに置いてある本や薬箱を乱雑に引っ張り出した。地面に突き落とされた物体たちは各々に文句を吐いた。{{ namae }}の耳には届かない。喧しさからか、先端を輪状に結んだビニル紐がどうしたのと顔を覗かせる。
 {{ namae }}は声を上げることをやめた。そう言えば何時片付けてしまったのだろうか、無意識下で行っていたのだろうか。{{ namae }}は肩で呼吸をしながらだらしなく笑った。セミも一緒に笑っている。嗤っている。哂っている。どうしようもない馬鹿だと叫んでいる。
 今度こそとカーテンレールにしっかり結びつけた。{{ namae }}はイスに上がり、輪の部分に首を潜らせる。なんだか素敵なもののように見えた。何だか素敵なことのように思えた。セミが応援している。部屋の風船たちが早くしろと急かす。どうせ誰も待っていないことを、{{ namae }}は解っている。ただ、死ぬための機会を口を開けて待っていただけだ。ただ、何となく死ぬ理由がなくて生きていただけだ。だがそれももう終わる。ウィリアムが死んだという大義名分で{{ namae }}のこの行為は肯定される。
 {{ namae }}は笑った。寂しいと笑った。待ち望んだハッピーエンドは手を開いて歓迎している。
 そして、暗転。






「――い、おい!」

 誰かに頬を叩かれている。痛みと呼びかけに{{ namae }}の意識は浮上する。ゆっくりと瞼を上げた。眩しくて、瞬きを何度か繰り返す。眼前に誰かがいる。次第にピントが合う、ほんの数分前の自分が探していた顔だ。

「……――ッ」

 音にはならなかった。代わりに{{ namae }}は激しくせき込む。大丈夫かと頭上から声がする。確認するために、腕を伸ばしてウィリアムの頬に触れた。温度がない。空気がそのまま質量を持ったようだ。ほんもの、と言葉が落ちる。都合の良い幻覚を未だ見ているのだか、と{{ namae }}は意味がない事を知った上で頬を抓ってみる。世界がループしているのか、と一瞬だけ錯覚する。ウィリアムの肩越しに赤い風船が揺れているのが見えた。

「何でこんな真似なんかしたんだ……!」

 ウィリアムの声には怒りや悲しみ、歯痒さ……そう言った感情が混ぜられて、複雑な音色になっていた。ウィリアムは{{ namae }}の首にかかっているビニル紐を外し、床に放った。苦言が始まるのかと{{ namae }}はぼんやりと思った。ウィリアムの逞しい腕が{{ namae }}の上体を起こす。やはり温度はない。触れられている感覚はあるのに、体温がない。手が離れる。寂しい、と素直に思った。何気なくカレンダーを見る。八月の中旬。都合の良い夢もこれで終わりなのだろう。いやだ、と叫びたい。何で、と詰りたい。置いていかないでと困らせたい。

「なあ、{{ namae }}、」
「つれてって、」
「え?」

 {{ namae }}の言葉にウィリアムは目を丸くさせた。{{ namae }}はまっすぐとウィリアムを見つめる。見つめるというより、睨みつけるだ。{{ namae }}はふらつく身体の儘、何とかして立ち上がる。大丈夫か、と伸ばされた手を払った。ウィリアムが驚いたような、傷ついたような顔をする。
 傷ついたのはこちらだ。ウィリアムよりもずっと酷く深く傷ついている筈だ。汗で濡れた額をぬぐう。目に汗が入って涙が零れる。{{ namae }}はウィリアムを見ながら移動をして、窓に触れた。自分の腰と同じくらいの高さにある窓枠に触れる。後ろ手で窓を開く。ぬるい風が部屋に流れ込み、風船を舞い上がらせる。ウィリアムのドレッドヘアが揺れる。
 本当にあの赤い風船みたいに閉じ込めておくことが出来れば良かったのに!
 {{ namae }}は笑う。笑う、というより自然に口角が吊り上がった。別に何かがおかしい訳ではない。どうしてかは解らないけれども{{ namae }}の顔は笑っている。何かの本で、失笑恐怖症なるものがあるというのを聞いたことがある。それなのだろうか。だから何だ。

「連れていってよ、僕を、ウィリアムの元に。出来るだろ?」
「出来たとしても俺がすると思うか?」

 ウィリアムは{{ namae }}の言葉に狼狽えることはせず、毅然と{{ namae }}を睨み返す。

「{{ namae }}、あんたは生きなきゃいけないんだ。俺は死んだけどあんたはまだ、」
「そんな話聞きたくない!」

 網戸を開けて、{{ namae }}は窓枠に座る。ウィリアムが動こうとする前に、{{ namae }}は動くなと叫ぶ。動いたら飛び降りてやると付け加える。安っぽい脅迫だ。それでもウィリアムの動きを止めるには十分だ。ウィリアムは歯を噛み締めながら{{ namae }}を見る。

「{{ namae }}、とりあえず部屋に戻ろう。戻って話をしよう」

 ウィリアムの言葉に{{ namae }}は首を横に振る。
 セミの声が響く。去年もその前もウィリアムと聞いたことがある。厳密には種類が違うので少しは違うだろうが。

「僕を、すくってみせろ、ウィリアム・エリス!」

 言うや否や、{{ namae }}は後ろに倒れ込んだ。
 ゆっくりと遠退く自室を視野に収めながら、後悔をした。緑、青、黄、橙、紫などのカラフルな風船が青い空を埋め尽くしている。セミたちは腹を抱えて笑っている。どうせならあの告白の返事を聞いてから飛び降りれば良かった。どうせならもう一度好きだと言えば良かった。きっと世界で一番好きだったと言えば良かった。後悔が漣のように押し寄せる。
 ぼすん、と背中がマットに沈む。セミが突然静かになる。反作用で自身の身体が押し上げられ、重力によって落ちていく。何度かそれを繰り返す。突然のことに{{ namae }}の思考はぶつりと切れた。何が起こったか理解しようとする。
 セミの声が返ってきた。合唱が世界を満たす。自室の窓から出ていった色鮮やかな風船たちは風に流されていく。青空に様々な色が散らばっている。汗が一気に噴き出す。死んでいない。身体が一気に酸素を求め、{{ namae }}は短く早い呼吸を繰り返す。どく、どく、と心臓が破裂せんばかりに脈を打つ。指の先までが熱く、汗で滑る。

「間に合った……」

 イライがひょっこりと顔を覗かせた。{{ namae }}はぱちくりとした顔でイライを見る。イライに腕を引かれてそのまま上体を起こす。どうして此処にイライがいるのか解らない。どうして自分の身体は地面に打ち付けられていないのか理解できない。解らなくて、阿呆のように目と口を開けるしかできない。どうしてを溢れさせて顔を上げる。赤い風船が赤い糸をなびかせながらどこかへ消えていった。

2020/08/09
2022/06/07
 {{ namae }}は弾かれたように駆け出した。ナワーブに嘘だと掴みかからなかったのは偉いと自画自賛する。それほどの余裕があるんだなとも何処か冷静な部分が自嘲した。今日に限ってアルコールは体内に入れていない。何時だって健康体だ。アルコールを入れておくべきだった。
 件の公園に行くと、そこは相変わらず子供たちの遊び場になっている。
 子供の笑い声。
 ボールの弾む音。
 セミの嘲笑。
 イヌの鳴き声。
 エンジンの音。
 子供の嗤笑。
 甲高い悲鳴。
 人々の冷笑。
 セミたちの揶揄。
 公園の入り口付近に錆びて片腕が取れた飛び出し坊やがぽつんと立っている。その傍らに交通事故の目撃情報を求める看板がある。それらの足元には、花束やらお菓子やらワンカップの中に入っている燃え尽きた線香がある。そのワンカップの中に、火のついていない線香花火が入っている。風に吹かれて、ゆぅらりと頭を揺らす。瞼の裏で線香花火が瞬いた。
 {{ namae }}は走った。逃げ出すようにしてただただ走った。脳裏に浮かぶ多くの人たち。皆スーツや制服、黒い服を着ている。百合の花。良い慣れない聖書の言葉。周囲の人たちは泣いていた。
 {{ namae }}が自室に駆けこむと、部屋の中は膨らんだゴム風船でいっぱいだった。ヘリウムで満たされたもの。人間の呼気で満たされたもの。好き勝手に浮かんだり倒れ伏したりしてごちゃごちゃと色鮮やかな風船が部屋を満たしている。窓の外でセミたちは{{ namae }}をがしゃがしゃと非難する。嘲笑う。哄笑する。喚く。罵倒する。
 {{ namae }}は顔を上げる。真っ赤な糸を結び付けた赤い風船は、椅子の背に括りつけられている。
 セミが一斉に口を噤んだ。{{ namae }}は意識的に息を吐く。アルコールの匂いがしない息が吐き出される。脳髄に、冷たいナイフでも刺し込まれた気持ちだった。{{ namae }}は自身の汗ばんだ掌をズボンに擦りつける。指先は酷く冷たい。浅い呼吸が何度も繰り返される。唇が、指先が、じん、と痺れを訴える。視界の端が暗くなる。立っていられなくて{{ namae }}は崩れ落ちた。
 酸素を吸い過ぎているのに脳味噌は酸素を求める。開きっぱなしの口の端から唾液が落ちる。ウィリアムの名前を叫ぶ。返事はない。ひょっこりと姿を現すことも、ない。それはそうだ、ウィリアムはもう既に死んでいる。夏休みに入る前に葬式だって執り行われた。そのことを{{ namae }}は漸く理解してしまった。把握してしまった。認識してしまった。
 うそだ、と呻くような声が響く。{{ namae }}は顔を上げ、地面を蹴って押し入れに飛びついた。押し入れを開けて、ウィリアムの姿を探す。半狂乱になりながら名前を叫んだ。だが返事はない。誰も現れない。押し入れに置いてある本や薬箱を乱雑に引っ張り出した。地面に突き落とされた物体たちは各々に文句を吐いた。{{ namae }}の耳には届かない。喧しさからか、先端を輪状に結んだビニル紐がどうしたのと顔を覗かせる。
 {{ namae }}は声を上げることをやめた。そう言えば何時片付けてしまったのだろうか、無意識下で行っていたのだろうか。{{ namae }}は肩で呼吸をしながらだらしなく笑った。セミも一緒に笑っている。嗤っている。哂っている。どうしようもない馬鹿だと叫んでいる。
 今度こそとカーテンレールにしっかり結びつけた。{{ namae }}はイスに上がり、輪の部分に首を潜らせる。なんだか素敵なもののように見えた。何だか素敵なことのように思えた。セミが応援している。部屋の風船たちが早くしろと急かす。どうせ誰も待っていないことを、{{ namae }}は解っている。ただ、死ぬための機会を口を開けて待っていただけだ。ただ、何となく死ぬ理由がなくて生きていただけだ。だがそれももう終わる。ウィリアムが死んだという大義名分で{{ namae }}のこの行為は肯定される。
 {{ namae }}は笑った。寂しいと笑った。待ち望んだハッピーエンドは手を開いて歓迎している。
 そして、暗転。






「――い、おい!」

 誰かに頬を叩かれている。痛みと呼びかけに{{ namae }}の意識は浮上する。ゆっくりと瞼を上げた。眩しくて、瞬きを何度か繰り返す。眼前に誰かがいる。次第にピントが合う、ほんの数分前の自分が探していた顔だ。

「……――ッ」

 音にはならなかった。代わりに{{ namae }}は激しくせき込む。大丈夫かと頭上から声がする。確認するために、腕を伸ばしてウィリアムの頬に触れた。温度がない。空気がそのまま質量を持ったようだ。ほんもの、と言葉が落ちる。都合の良い幻覚を未だ見ているのだか、と{{ namae }}は意味がない事を知った上で頬を抓ってみる。世界がループしているのか、と一瞬だけ錯覚する。ウィリアムの肩越しに赤い風船が揺れているのが見えた。

「何でこんな真似なんかしたんだ……!」

 ウィリアムの声には怒りや悲しみ、歯痒さ……そう言った感情が混ぜられて、複雑な音色になっていた。ウィリアムは{{ namae }}の首にかかっているビニル紐を外し、床に放った。苦言が始まるのかと{{ namae }}はぼんやりと思った。ウィリアムの逞しい腕が{{ namae }}の上体を起こす。やはり温度はない。触れられている感覚はあるのに、体温がない。手が離れる。寂しい、と素直に思った。何気なくカレンダーを見る。八月の中旬。都合の良い夢もこれで終わりなのだろう。いやだ、と叫びたい。何で、と詰りたい。置いていかないでと困らせたい。

「なあ、{{ namae }}、」
「つれてって、」
「え?」

 {{ namae }}の言葉にウィリアムは目を丸くさせた。{{ namae }}はまっすぐとウィリアムを見つめる。見つめるというより、睨みつけるだ。{{ namae }}はふらつく身体の儘、何とかして立ち上がる。大丈夫か、と伸ばされた手を払った。ウィリアムが驚いたような、傷ついたような顔をする。
 傷ついたのはこちらだ。ウィリアムよりもずっと酷く深く傷ついている筈だ。汗で濡れた額をぬぐう。目に汗が入って涙が零れる。{{ namae }}はウィリアムを見ながら移動をして、窓に触れた。自分の腰と同じくらいの高さにある窓枠に触れる。後ろ手で窓を開く。ぬるい風が部屋に流れ込み、風船を舞い上がらせる。ウィリアムのドレッドヘアが揺れる。
 本当にあの赤い風船みたいに閉じ込めておくことが出来れば良かったのに!
 {{ namae }}は笑う。笑う、というより自然に口角が吊り上がった。別に何かがおかしい訳ではない。どうしてかは解らないけれども{{ namae }}の顔は笑っている。何かの本で、失笑恐怖症なるものがあるというのを聞いたことがある。それなのだろうか。だから何だ。

「連れていってよ、僕を、ウィリアムの元に。出来るだろ?」
「出来たとしても俺がすると思うか?」

 ウィリアムは{{ namae }}の言葉に狼狽えることはせず、毅然と{{ namae }}を睨み返す。

「{{ namae }}、あんたは生きなきゃいけないんだ。俺は死んだけどあんたはまだ、」
「そんな話聞きたくない!」

 網戸を開けて、{{ namae }}は窓枠に座る。ウィリアムが動こうとする前に、{{ namae }}は動くなと叫ぶ。動いたら飛び降りてやると付け加える。安っぽい脅迫だ。それでもウィリアムの動きを止めるには十分だ。ウィリアムは歯を噛み締めながら{{ namae }}を見る。

「{{ namae }}、とりあえず部屋に戻ろう。戻って話をしよう」

 ウィリアムの言葉に{{ namae }}は首を横に振る。
 セミの声が響く。去年もその前もウィリアムと聞いたことがある。厳密には種類が違うので少しは違うだろうが。

「僕を、すくってみせろ、ウィリアム・エリス!」

 言うや否や、{{ namae }}は後ろに倒れ込んだ。
 ゆっくりと遠退く自室を視野に収めながら、後悔をした。緑、青、黄、橙、紫などのカラフルな風船が青い空を埋め尽くしている。セミたちは腹を抱えて笑っている。どうせならあの告白の返事を聞いてから飛び降りれば良かった。どうせならもう一度好きだと言えば良かった。きっと世界で一番好きだったと言えば良かった。後悔が漣のように押し寄せる。
 ぼすん、と背中がマットに沈む。セミが突然静かになる。反作用で自身の身体が押し上げられ、重力によって落ちていく。何度かそれを繰り返す。突然のことに{{ namae }}の思考はぶつりと切れた。何が起こったか理解しようとする。
 セミの声が返ってきた。合唱が世界を満たす。自室の窓から出ていった色鮮やかな風船たちは風に流されていく。青空に様々な色が散らばっている。汗が一気に噴き出す。死んでいない。身体が一気に酸素を求め、{{ namae }}は短く早い呼吸を繰り返す。どく、どく、と心臓が破裂せんばかりに脈を打つ。指の先までが熱く、汗で滑る。

「間に合った……」

 イライがひょっこりと顔を覗かせた。{{ namae }}はぱちくりとした顔でイライを見る。イライに腕を引かれてそのまま上体を起こす。どうして此処にイライがいるのか解らない。どうして自分の身体は地面に打ち付けられていないのか理解できない。解らなくて、阿呆のように目と口を開けるしかできない。どうしてを溢れさせて顔を上げる。赤い風船が赤い糸をなびかせながらどこかへ消えていった。

2020/08/09
2022/06/07
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非公式二次創作夢サイト。公式及び関係者様とは一切関係ありません。様々な友情、恋愛の形が許せる方推奨です。
R-15ですので中学生を含む十五歳以下の方は閲覧をお控えください。前触れも無く悲恋、暴力的表現、流血、性描写、倫理的問題言動、捏造、オリジナル設定、キャラ崩壊等を含みます。ネタバレに関してはほぼ配慮してません。夢主≠主人公です。
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