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Novel pkmn 今日はえいえんの最初の日(シンオウでウォロと再会/完結)
1 / 2 / 3 / 4 tt5 !+さよならの練習を(男主とオフェンスが過ごす真夏の話/現パロ/完結)
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さよならの練習を01
オフェンスずっと後悔していることがある。
オレンジ色に染まった講義室。間近にある呆けた顔のウィリアム。グラウンドから聞こえる運動部の声。
嫌いだと言ってくれと強がりを吐いたあと、答えを聞く前に青年は教室を飛び出した。
――きっと自分の命が終わるまで、きっと自分が息絶えたあとでも、ずっとどうしようもない程に後悔しているのだろう。
蝉の声が、わんわんと響き渡る。どこまでも空は広がっている。
{{ namae }}は汗水を垂らしながらアスファルト舗装された道を歩いていた。教科書とノートを詰めたリュックを背負い、ただただ歩く。ランニングをする陸上部員たちが{{ namae }}を追い越していく。汗の匂いに交じってシトラスのような石鹸のようなハッカのような、様々な匂いが鼻腔を擽った。
{{ namae }}は夏季休暇中であった。こんな茹だるような暑い日は、普段であればクーラーを効かせた部屋で大人しくしていた。今回はたまたま課題に関する質問を発見してしまい教授に直接質問しに行ったのだった。疑問は消え去ったがそのことをほんの少しだけ後悔している。何も暑さが極まる時間帯に行くことなかったのに。
「――あつ、」
独り言のように呟く。髪から汗が垂れて地面に落ちる。手に握ったままの携帯を見た。
ウィリアムからの連絡は相変わらずない。いつから無いんだっけと茹だる脳味噌が呟く。{{ namae }}は記憶をなぞっていく。最後に会ったのは、いつだったか。涼しい家の中でぐうだらとしていれば良かった。そうすれば、何か連絡が来ていたかもしれないのに。
「そうだね、最近は此処のところすごく暑いから」
{{ namae }}の独り言を拾ったイライが声を出す。学校で偶然出会ったのだ。そのままイライは{{ namae }}の後を付いて来ている。{{ namae }}は何も言わない。
ウィリアムのSNSアカウントを見ても、ある日を境に何も動いていない。元々そんなに更新する質ではなかったからかと納得する。
{{ namae }}は服の袖で汗を拭う。殆ど真上から注がれる太陽光が、焼き殺さんばかりに皮膚を焼いていく。{{ namae }}は自身の皮膚を見た。黒く焦げてはいない。振り返ってイライを見る。彼は殆ど露出している部分がなく、暑苦しそうな格好だ。僅かに見える肌が赤い。
「倒れたり、しない?」
「あっ、漸く話してくれた」
今まで私のことを見るだけだったのにね、とイライがほんの少しだけ声を弾ませて言う。彼もこの暑さにはどうにもならないらしい。放っておけば倒れてそうな気がした。{{ namae }}はたまたま目に触れた喫茶店を指さす。昼ご飯ついでに休憩しようと言えば、そうだねと同意をされた。
クーラーの効いた、落ち着いた店内は人がまばらだ。ウェイトレスに案内され、店の隅にある丸いテーブルに座る。{{ namae }}は濃茶色の天板を掌で撫でた。滑らかな手触りだ。メニューと共に渡された水を一気に飲む。カルキ抜きの為かレモンの匂いが僅かにする。冷たい水は喉を下り胃へ収まる。コップを置くと、氷がからん、と音を出す。冷たい空気と水で汗が引いていく。ふう、と息を吐いた。
涼しいね、とイライが笑う。{{ namae }}は本当にイライが涼しいと感じているのか解らないがそうだねと相槌を打つ。イライはオムライスとアイスコーヒーを、{{ namae }}はハンバーグセットとアイスティーを注文する。他の客が飲んでいるクリームソーダは酷く鮮やかな緑色で涼し気だ。あれにすればよかったかなと一瞬だけ思う。{{ namae }}は携帯を見る。相変わらず沈黙のままだ。
「大丈夫かい?」
イライの言葉に{{ namae }}は顔を上げる。何が大丈夫なのか解らない。前期の結果はもう明らかになっている。具合なら見ての通りだ。ウェイトレスが二人の前にグラスを置いた。赤茶色と焦げ茶色の液体が満ちたグラスは汗を掻いている。
「ええと、その、最近眠れていないようだし、……あまり泣けていなかったようだから」
イライの言葉に{{ namae }}は静かに瞬きをする。何のことだろうか。脳味噌をフル回転させる。自分が泣くようなことって何だろうか。最近あった飲み会の台詞が思い出す。ああ、そう言えば、と瞬きをした。
数ヵ月前の、ウィリアム主催の飲み会だった。酒の入ったノートンに、{{ namae }}はウィリアムに彼女が出来たら滅茶苦茶泣きそうだよねと揶揄われたのだ。酒の入った自分はすぐに反応出来ず、近くにいたナワーブが解ると笑いながら同意していた。それほどまでに{{ namae }}はウィリアムにべったりだった。酒がかなり入った{{ namae }}は顔の赤いウィリアムに、恋人とか作らないでよ、と割と本気で泣きついた。周りにいた友人たちは声を上げて笑い、ウィリアムは突然のことに解らずきょとんとしていた。{{ namae }}はそれに苛立って……それからの記憶は全くない。気が付いたら{{ namae }}は布団の上にいた。複数回目に体験する二日酔いの朦朧とした頭でもう絶対に飲まないと何度目かの誓いをした。
――もしかして、ウィリアムに彼女が出来たのだろうか
{{ namae }}の脳味噌は一つの解答を弾き出した。そうだったら、どうして自分に言ってくれないのだろうか、いや、言う訳がないか、先日そんなことを言った友達に対して。脳味噌が次々と解を紡いでいく。こびり付いた寂しさが小さく声を上げている。{{ namae }}はそれから目をそらしている。
あまりにも沈黙が長かったからか、イライがもう一度大丈夫かい、と尋ねた。{{ namae }}は笑いかける。
「大丈夫、割と元気だから」
なら良いんだと、イライは息を吐いた。
ウェイトレスが二人の食事を運んできた。二人は温かいそれを黙々と体内に収めていく。偶然見つけて入った店だったが、中々に美味しい。汗で塩分が失っていたことも大きいのかもしれない。今度ウィリアムを連れて行こうと、と{{ namae }}は心に決める。美味しいね、と言えばイライはそうだねと笑いかける。今度また皆にも教えようよ、宙ぶらりんな約束を取り付けた。
あっという間に食べ終わって二人は一息ついた。イライが窓の外を見る。{{ namae }}は携帯を見た。やはり連絡は無い。何度目かになるメッセージを送る。殆ど日課になっている。返事は一度も来ていない。
「あちこち遊びに行きたいね。去年みたいに海とか、花火とかさ」
そうだねと{{ namae }}は相槌を打つ。こういったことは基本的にウィリアムが主催だった。突発的にしようと言い出して{{ namae }}の腕を引いてあちこち連れて行ってくれた。二人きりのときもあったが、多くはイライやナワーブたちも一緒だ。山に川、海はもちろん、様々なテーマパークへと、色鮮やかな世界にウィリアムは{{ namae }}を連れ出したのだ。
「今度海か川にでも行かないか? スイカ割りしたいってエリスも言っていたし……」
{{ namae }}はイライの言葉に首を横に振った。
「今回はいいや。僕は家で何かしてるよ」
そう言って{{ namae }}は小さく笑って見せる。何かすることなんて、特にない癖に。
2020/04/19
2022/06/07
ずっと後悔していることがある。
オレンジ色に染まった講義室。間近にある呆けた顔のウィリアム。グラウンドから聞こえる運動部の声。
嫌いだと言ってくれと強がりを吐いたあと、答えを聞く前に青年は教室を飛び出した。
――きっと自分の命が終わるまで、きっと自分が息絶えたあとでも、ずっとどうしようもない程に後悔しているのだろう。
蝉の声が、わんわんと響き渡る。どこまでも空は広がっている。
{{ namae }}は汗水を垂らしながらアスファルト舗装された道を歩いていた。教科書とノートを詰めたリュックを背負い、ただただ歩く。ランニングをする陸上部員たちが{{ namae }}を追い越していく。汗の匂いに交じってシトラスのような石鹸のようなハッカのような、様々な匂いが鼻腔を擽った。
{{ namae }}は夏季休暇中であった。こんな茹だるような暑い日は、普段であればクーラーを効かせた部屋で大人しくしていた。今回はたまたま課題に関する質問を発見してしまい教授に直接質問しに行ったのだった。疑問は消え去ったがそのことをほんの少しだけ後悔している。何も暑さが極まる時間帯に行くことなかったのに。
「――あつ、」
独り言のように呟く。髪から汗が垂れて地面に落ちる。手に握ったままの携帯を見た。
ウィリアムからの連絡は相変わらずない。いつから無いんだっけと茹だる脳味噌が呟く。{{ namae }}は記憶をなぞっていく。最後に会ったのは、いつだったか。涼しい家の中でぐうだらとしていれば良かった。そうすれば、何か連絡が来ていたかもしれないのに。
「そうだね、最近は此処のところすごく暑いから」
{{ namae }}の独り言を拾ったイライが声を出す。学校で偶然出会ったのだ。そのままイライは{{ namae }}の後を付いて来ている。{{ namae }}は何も言わない。
ウィリアムのSNSアカウントを見ても、ある日を境に何も動いていない。元々そんなに更新する質ではなかったからかと納得する。
{{ namae }}は服の袖で汗を拭う。殆ど真上から注がれる太陽光が、焼き殺さんばかりに皮膚を焼いていく。{{ namae }}は自身の皮膚を見た。黒く焦げてはいない。振り返ってイライを見る。彼は殆ど露出している部分がなく、暑苦しそうな格好だ。僅かに見える肌が赤い。
「倒れたり、しない?」
「あっ、漸く話してくれた」
今まで私のことを見るだけだったのにね、とイライがほんの少しだけ声を弾ませて言う。彼もこの暑さにはどうにもならないらしい。放っておけば倒れてそうな気がした。{{ namae }}はたまたま目に触れた喫茶店を指さす。昼ご飯ついでに休憩しようと言えば、そうだねと同意をされた。
クーラーの効いた、落ち着いた店内は人がまばらだ。ウェイトレスに案内され、店の隅にある丸いテーブルに座る。{{ namae }}は濃茶色の天板を掌で撫でた。滑らかな手触りだ。メニューと共に渡された水を一気に飲む。カルキ抜きの為かレモンの匂いが僅かにする。冷たい水は喉を下り胃へ収まる。コップを置くと、氷がからん、と音を出す。冷たい空気と水で汗が引いていく。ふう、と息を吐いた。
涼しいね、とイライが笑う。{{ namae }}は本当にイライが涼しいと感じているのか解らないがそうだねと相槌を打つ。イライはオムライスとアイスコーヒーを、{{ namae }}はハンバーグセットとアイスティーを注文する。他の客が飲んでいるクリームソーダは酷く鮮やかな緑色で涼し気だ。あれにすればよかったかなと一瞬だけ思う。{{ namae }}は携帯を見る。相変わらず沈黙のままだ。
「大丈夫かい?」
イライの言葉に{{ namae }}は顔を上げる。何が大丈夫なのか解らない。前期の結果はもう明らかになっている。具合なら見ての通りだ。ウェイトレスが二人の前にグラスを置いた。赤茶色と焦げ茶色の液体が満ちたグラスは汗を掻いている。
「ええと、その、最近眠れていないようだし、……あまり泣けていなかったようだから」
イライの言葉に{{ namae }}は静かに瞬きをする。何のことだろうか。脳味噌をフル回転させる。自分が泣くようなことって何だろうか。最近あった飲み会の台詞が思い出す。ああ、そう言えば、と瞬きをした。
数ヵ月前の、ウィリアム主催の飲み会だった。酒の入ったノートンに、{{ namae }}はウィリアムに彼女が出来たら滅茶苦茶泣きそうだよねと揶揄われたのだ。酒の入った自分はすぐに反応出来ず、近くにいたナワーブが解ると笑いながら同意していた。それほどまでに{{ namae }}はウィリアムにべったりだった。酒がかなり入った{{ namae }}は顔の赤いウィリアムに、恋人とか作らないでよ、と割と本気で泣きついた。周りにいた友人たちは声を上げて笑い、ウィリアムは突然のことに解らずきょとんとしていた。{{ namae }}はそれに苛立って……それからの記憶は全くない。気が付いたら{{ namae }}は布団の上にいた。複数回目に体験する二日酔いの朦朧とした頭でもう絶対に飲まないと何度目かの誓いをした。
――もしかして、ウィリアムに彼女が出来たのだろうか
{{ namae }}の脳味噌は一つの解答を弾き出した。そうだったら、どうして自分に言ってくれないのだろうか、いや、言う訳がないか、先日そんなことを言った友達に対して。脳味噌が次々と解を紡いでいく。こびり付いた寂しさが小さく声を上げている。{{ namae }}はそれから目をそらしている。
あまりにも沈黙が長かったからか、イライがもう一度大丈夫かい、と尋ねた。{{ namae }}は笑いかける。
「大丈夫、割と元気だから」
なら良いんだと、イライは息を吐いた。
ウェイトレスが二人の食事を運んできた。二人は温かいそれを黙々と体内に収めていく。偶然見つけて入った店だったが、中々に美味しい。汗で塩分が失っていたことも大きいのかもしれない。今度ウィリアムを連れて行こうと、と{{ namae }}は心に決める。美味しいね、と言えばイライはそうだねと笑いかける。今度また皆にも教えようよ、宙ぶらりんな約束を取り付けた。
あっという間に食べ終わって二人は一息ついた。イライが窓の外を見る。{{ namae }}は携帯を見た。やはり連絡は無い。何度目かになるメッセージを送る。殆ど日課になっている。返事は一度も来ていない。
「あちこち遊びに行きたいね。去年みたいに海とか、花火とかさ」
そうだねと{{ namae }}は相槌を打つ。こういったことは基本的にウィリアムが主催だった。突発的にしようと言い出して{{ namae }}の腕を引いてあちこち連れて行ってくれた。二人きりのときもあったが、多くはイライやナワーブたちも一緒だ。山に川、海はもちろん、様々なテーマパークへと、色鮮やかな世界にウィリアムは{{ namae }}を連れ出したのだ。
「今度海か川にでも行かないか? スイカ割りしたいってエリスも言っていたし……」
{{ namae }}はイライの言葉に首を横に振った。
「今回はいいや。僕は家で何かしてるよ」
そう言って{{ namae }}は小さく笑って見せる。何かすることなんて、特にない癖に。
2020/04/19
2022/06/07
about
非公式二次創作夢サイト。公式及び関係者様とは一切関係ありません。様々な友情、恋愛の形が許せる方推奨です。
R-15ですので中学生を含む十五歳以下の方は閲覧をお控えください。前触れも無く悲恋、暴力的表現、流血、性描写、倫理的問題言動、捏造、オリジナル設定、キャラ崩壊等を含みます。ネタバレに関してはほぼ配慮してません。夢主≠主人公です。
R-18作品についてはワンクッションがあります。高校生を含む十八歳未満の方は閲覧をお控えください。
当サイトのコンテンツの無断転載、二次配布、オンラインブックマークなどはお控えください。同人サイト様のみリンクフリーです。
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master:ニーナ(別名義でCP活動もしていますnote)
R-15ですので中学生を含む十五歳以下の方は閲覧をお控えください。前触れも無く悲恋、暴力的表現、流血、性描写、倫理的問題言動、捏造、オリジナル設定、キャラ崩壊等を含みます。ネタバレに関してはほぼ配慮してません。夢主≠主人公です。
R-18作品についてはワンクッションがあります。高校生を含む十八歳未満の方は閲覧をお控えください。
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master:ニーナ(別名義でCP活動もしていますnote)
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