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Novel pkmn 今日はえいえんの最初の日(シンオウでウォロと再会/完結)
1 / 2 / 3 / 4 tt5 !+さよならの練習を(男主とオフェンスが過ごす真夏の話/現パロ/完結)
1 /2 /3 /4 /5 /6 /7 /8 /xx other
レインボーのはかない夢跡
獅子神!ギャンブラー夢主♂
目の裏辺りがつきん、と痛む。目を開くと遮光カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。見慣れない部屋の触り慣れない寝具に{{ namae }}は頭を擦りつける。何処か気持ち悪い。頭が重い。二日酔いだと判断を下す。身体が重たくて動きたくない。とく、とく、と聞こえる心音と感じる温かさにに{{ namae }}はほうと息を吐いた。懐かしい、温かな記憶を指先でなぞる。すん、と鼻で息をする。甘い香りはしなかった、が、清潔そうな匂いと良いにおいがする。滑らかな、温かいものに触れて{{ namae }}は心が安らぐのを感じた。うとうととしかけたのに、違和感に目を開く。顔を上げると金の髪が見えた。獅子神が、眠っている。{{ namae }}自身は獅子神を丁度腹部に腕を回し、抱き枕のようにして眠っていた。
一気に血の気が引いた。そろそろと離れ、自身を検めると下着は履いていた。逆に言えば下着しか身につけていない。獅子神を見ると彼は上半身裸であった。{{ namae }}はぎょっとした。白い首筋にくっきりとした歯形がある。歯のへこみ周辺は炎症を起こしているのか赤くなってしまっている。恐らく真新しい怪我だ。あと甘噛みとかではなく、思い切り噛んでいる。村雨でなくてもそれくらいは解る。多分、その犯人が自分だと{{ namae }}は確信めいたものを得ている。叶程の観察眼がなくとも、{{ namae }}は今までの経験上自分であることを知っている。
もしや、まさか、最悪な手を選んでしまったのだろうか。
{{ namae }}は獅子神に対して好意を抱いている。今の関係である友達よりも親しい仲になりたいと常々思っている。そのために獅子神だけは名前で呼ぶようになったのだが、親しい友達どまりである。
記憶にはないが、境界をぽんと飛び越えてしまったのだろうか。少し記憶をたどろうとするが、なにも残っていない。ちょっと酒を飲み過ぎて、世界が終わるような心地がして、意味の解らぬ言葉を呪詛のように呻きながら泣いていた記憶もある。隣にいた真経津や叶は楽しそうな顔をしていたのも覚えている。友達の頭を殴ってその部分の記憶を取り除けないかなあと現実逃避をした。皆覚えていないと良いなぁと夢を描く。
生憎目の前の状況は何も変わっていない。何度目をこすっても、眠っている獅子神は消えやしない。自身もパンツ一丁であることは変わらない。
もしかしてこれが夢なのかも、と思いかけた頃、獅子神が身動ぎをする。{{ namae }}はびっくりして息をするのも忘れた。ゆっくりと瞼が押し上げられる。何度か瞬きを繰り返し、眉間にきゅっと皺を寄せさせる。初めて見る表情だ。青い目が{{ namae }}を捉え、ふわりと柔らかくなる。
「おはよ、大丈夫か、具合、」
「ごめんっ!」
{{ namae }}は素早く土下座した。は、と獅子神がぽかんとした音を落とす。{{ namae }}は額を高級そうな寝具に擦り付ける。顔を上げろよと気遣う声と共に肩を掴まれ上体を起こされる。ぐわん、と脳味噌が揺れ、思わず{{ namae }}は顔を顰めさせた。悪いと獅子神が言う。獅子神の大きな手が{{ namae }}の手にスポーツドリンクの入ったペットボトルを握らせる。優しい、と{{ namae }}は胸がじんと温かくなる。覚えてないのかと獅子神に問われ、{{ namae }}は何も覚えていないと項垂れる。そうか、と獅子神の静かな声が落ちる。
「もしかなくても、僕、敬一君に乱暴とかした?」
「え? ……いや、何もねぇよ。そもそも酔っ払いの、しかも{{ namae }}が誰か殴ろうとしたらオレは抑え込めるだろ?」
確かにそうだ。日々趣味で鍛えている獅子神と、特に鍛えることや運動をしない{{ namae }}とでは筋力の差が明らかにある。{{ namae }}自身が描いている乱暴と、獅子神が言う乱暴に少しの差はある気がするが獅子神のいうことは正しい。じゃあ何で同じベッドに、と{{ namae }}が震えた声で尋ねる。マジで何も覚えてねぇのかよと言われ、{{ namae }}はこくりと頷いた。
「{{ namae }}が中々離してくれなかったからもうそのままで寝るかってなったんだ」
「ごめん……あと、敬一くんは裸で寝るタイプの人……?」
「は? あー……覚えてねぇと思うけど、ゲロ、吐いたから」
「うあぁぁああ……!」
自身の吐瀉物が自身の服と獅子神の服を汚したのは明白だった。取り敢えず洗濯したし今頃乾いているんじゃないかという獅子神の言葉は{{ namae }}の鼓膜を右から左へと抜けていく。ご迷惑をおかけしまして、と社会人になってから身に付いた言葉を口にする。獅子神は酒を飲みすぎんなよと声を掛ける。優しくて涙が出そうだ。今度洗剤送るねと言えば、お中元かよと笑われる。
「起きれるか? それとも寝とくか?」
「あ、うん。起きる」
獅子神はさっさとベッドから降りてクローゼットを開けている。獅子神の部屋だったのかと漸く理解した。獅子神が身支度を整えるのを、{{ namae }}はぼうっと眺める。美しいなと美術品に触れたときのことを思い出し、映画のワンシーンを見ているようだとも思えた。鍛えている肉体の美しさに思いを馳せ、いろんな服を着せたい気持ちにもなる。
「あと、その、歯形って……」
獅子神はぴたりと固まった。そのまま何も答えない。恐らく何と言おうかと言葉を探しているのだろう。だが{{ namae }}は獅子神のその反応で直ぐにすべてを理解した。{{ namae }}は頭を抱えて蹲り、悲痛そうな声を上げる。気に済んなよといつもの格好をした獅子神はそう言っていたが、歯形は痛々しそうに見える。何を思って噛んだのか覚えていないが、思い切り噛んだのだろう。身支度を整えた獅子神はシャツとズボンを{{ namae }}に貸してくれた。{{ namae }}はそれを着る。随分ゆったりとしている。体格を考えて、納得する。
「味噌汁とかなら飲めるか?」
「の、飲めるけど……あの、ガーゼとか、」
言いかけて{{ namae }}は口を閉ざした。どうせ村雨がいるのだ。何か勝手に手を施す前に村雨に診せた方が良いと気付いたのだ。恐らくそれは獅子神もそう思っているのだろう。取り敢えず飯食おうぜと腕を引かれて、{{ namae }}は付いて行くことにした。途中、そんな風に取り乱すことあるんだなと獅子神が笑う。{{ namae }}は恥ずかしくて俯いた。
真経津と村雨はもう既に食事を終えたようだった。おはようと挨拶をしてきた真経津に獅子神は挨拶を返す。わ、痛そう~! と真経津は少し楽しそうに言いながら、自身の首筋を指で示す。
「ねぇねぇ獅子神さん、本当に何もなかったの?」
「何にもねぇよ、ある訳ないだろ」
飯食ったのかと聞いて、食べたよと会話している。{{ namae }}はそれを横目に席に座る。未だずきずきと頭が痛む。貰ったスポーツドリンクをちょびちょびと飲みながら、向かいに座っている村雨を見た。村雨は食後のコーヒーを飲んでいる。
「あなた、昨夜獅子神に噛みついたそうだな」
「覚えてない」
素っ気ない言葉を{{ namae }}は突き返す。赤い目がちらりと{{ namae }}を見る。{{ namae }}は拗ねた子供のようにそっぽ向く。朝の弱い叶はまだ起きていない。真経津が戻って来て{{ namae }}の隣に座る。両肘をついて{{ namae }}を見た。
「{{ namae }}さんって、大胆だよねぇ」
くすくすと楽しそうに真経津が言う。
――フライパンで全員分の頭を殴れば記憶を飛ばせるだろうか
{{ namae }}は物騒なことを思いながら真経津を睨み返すしか出来なかった。
地獄絵図だ。確かに生命はかかっていないが、もう既に寝てしまった村雨が羨ましいと素直に思えた。
三人の前にあるのは所謂パーティドリンクと呼ばれるものだ。{{ namae }}が飲んだことないと言ったために叶と真経津が馬鹿みたいに買って来た。そしてそれを{{ namae }}は馬鹿みたいに片っ端から飲んだのだ。色鮮やかで少量ながらもアルコール度数の高いそれがどんどん無くなっていく様は、横で見ている獅子神の心配する度合と比例していく。摘まみがあった方が良いんじゃないかと台所に行って簡単な摘まみを作って、水やオレンジジュースと一緒に戻って来たらもう既に{{ namae }}は出来上がっていた。空き瓶の数を数えたくなくて、獅子神は視線をそっと逸らす。念のため吐いたときの袋を持ってきて良かったと思った。
真経津がおつまみだと喜んでいた。飲ませすぎだろ、と苦言を呈せば、美味しそうに飲んでたよと悪びれもなく返される。獅子神はソファに座り、ナッツを摘まんで食べる。
「ほら、{{ namae }}君。噂をすれば敬一君だぞ」
叶が楽しそうに笑いながら獅子神を指す。{{ namae }}は小さい酒瓶を置いた。それも空になっている。ふらふらと覚束ない足取りで獅子神の元へ来た。{{ namae }}の顔の血色が良い。首元まで赤い気さえする。けいいちくん、と涙混じりの声で{{ namae }}を呼ばれる。自分よりも年上なのに、幼い子供みたいだ。獅子神に抱き着き、すんすんと鼻を鳴らして泣いている。真経津と叶がニヤニヤとした顔で見ている。
「お前らな、そんなに飲ませ、っい゛……!?」
首筋に激痛が走った。獅子神は咄嗟に{{ namae }}の肩を掴み無理に引きはがす。血が出てるよと真経津の声が聞こえた。{{ namae }}の唇に赤色が付着している。噛まれたと遅れて理解する。
{{ namae }}の目からぼろぼろと大粒の涙が零れていく。あー、あー、と仕方なさそうな声を大袈裟に上げて獅子神は{{ namae }}の目元を指で拭う。何でこいつが泣くんだと思ったが、酔っ払いに言っても仕方ないことだ。涙かアルコールで潤んだ目が獅子神を見る。泣き上戸だったのかと凡そどうでも良いことをぼんやりと思った。
「あのね、僕、敬一くんとはすごく仲良しでいたい……」
普段からは想像できないようなことを普段からは想像できないような弱々しい声で言われ、獅子神はおう、としか返せない。獅子神が初めて{{ namae }}を見たときは、村雨や叶のように自身よりも格上の人間だと直ぐに理解できた。普段の所作などで生まれたときから一定以上の愛も金も得てきた人間だと察することが出来た。他の友人たちと同じ、生きている世界が違う人。しかも{{ namae }}は叶に近い、というより叶以上に気難しいタイプで彼自身が気に入った人としか喋らないタイプだ。業務的な連絡をしているときの心底つまらなさそうな、どうでも良さそうな顔は見ているこちらが緊張するほどだ。そんな人から一定以上の好意を抱かれているようで、ほっとする。
「きらいにならないで、」
零れた涙が獅子神の指を濡らす。{{ namae }}の言葉に獅子神は言葉を詰まらせた。愛も金も運さえも恵まれている人間に分類されるような人間に、何をそんなに怖がることがあるのか理解できない。普段村雨ほどではないが何を考えているのか解らない人が酒が入っているとはいえ、そんなに泣く程嫌なことがあるのか。
「、う゛」
{{ namae }}の両手が自身の口を塞いだ。獅子神はすぐに理解をした。ズボンのポケットに突っ込んでいた袋を取り出し広げようとしたが、間に合わなかった。
2023/05/28
!ギャンブラー夢主♂
目の裏辺りがつきん、と痛む。目を開くと遮光カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。見慣れない部屋の触り慣れない寝具に{{ namae }}は頭を擦りつける。何処か気持ち悪い。頭が重い。二日酔いだと判断を下す。身体が重たくて動きたくない。とく、とく、と聞こえる心音と感じる温かさにに{{ namae }}はほうと息を吐いた。懐かしい、温かな記憶を指先でなぞる。すん、と鼻で息をする。甘い香りはしなかった、が、清潔そうな匂いと良いにおいがする。滑らかな、温かいものに触れて{{ namae }}は心が安らぐのを感じた。うとうととしかけたのに、違和感に目を開く。顔を上げると金の髪が見えた。獅子神が、眠っている。{{ namae }}自身は獅子神を丁度腹部に腕を回し、抱き枕のようにして眠っていた。
一気に血の気が引いた。そろそろと離れ、自身を検めると下着は履いていた。逆に言えば下着しか身につけていない。獅子神を見ると彼は上半身裸であった。{{ namae }}はぎょっとした。白い首筋にくっきりとした歯形がある。歯のへこみ周辺は炎症を起こしているのか赤くなってしまっている。恐らく真新しい怪我だ。あと甘噛みとかではなく、思い切り噛んでいる。村雨でなくてもそれくらいは解る。多分、その犯人が自分だと{{ namae }}は確信めいたものを得ている。叶程の観察眼がなくとも、{{ namae }}は今までの経験上自分であることを知っている。
もしや、まさか、最悪な手を選んでしまったのだろうか。
{{ namae }}は獅子神に対して好意を抱いている。今の関係である友達よりも親しい仲になりたいと常々思っている。そのために獅子神だけは名前で呼ぶようになったのだが、親しい友達どまりである。
記憶にはないが、境界をぽんと飛び越えてしまったのだろうか。少し記憶をたどろうとするが、なにも残っていない。ちょっと酒を飲み過ぎて、世界が終わるような心地がして、意味の解らぬ言葉を呪詛のように呻きながら泣いていた記憶もある。隣にいた真経津や叶は楽しそうな顔をしていたのも覚えている。友達の頭を殴ってその部分の記憶を取り除けないかなあと現実逃避をした。皆覚えていないと良いなぁと夢を描く。
生憎目の前の状況は何も変わっていない。何度目をこすっても、眠っている獅子神は消えやしない。自身もパンツ一丁であることは変わらない。
もしかしてこれが夢なのかも、と思いかけた頃、獅子神が身動ぎをする。{{ namae }}はびっくりして息をするのも忘れた。ゆっくりと瞼が押し上げられる。何度か瞬きを繰り返し、眉間にきゅっと皺を寄せさせる。初めて見る表情だ。青い目が{{ namae }}を捉え、ふわりと柔らかくなる。
「おはよ、大丈夫か、具合、」
「ごめんっ!」
{{ namae }}は素早く土下座した。は、と獅子神がぽかんとした音を落とす。{{ namae }}は額を高級そうな寝具に擦り付ける。顔を上げろよと気遣う声と共に肩を掴まれ上体を起こされる。ぐわん、と脳味噌が揺れ、思わず{{ namae }}は顔を顰めさせた。悪いと獅子神が言う。獅子神の大きな手が{{ namae }}の手にスポーツドリンクの入ったペットボトルを握らせる。優しい、と{{ namae }}は胸がじんと温かくなる。覚えてないのかと獅子神に問われ、{{ namae }}は何も覚えていないと項垂れる。そうか、と獅子神の静かな声が落ちる。
「もしかなくても、僕、敬一君に乱暴とかした?」
「え? ……いや、何もねぇよ。そもそも酔っ払いの、しかも{{ namae }}が誰か殴ろうとしたらオレは抑え込めるだろ?」
確かにそうだ。日々趣味で鍛えている獅子神と、特に鍛えることや運動をしない{{ namae }}とでは筋力の差が明らかにある。{{ namae }}自身が描いている乱暴と、獅子神が言う乱暴に少しの差はある気がするが獅子神のいうことは正しい。じゃあ何で同じベッドに、と{{ namae }}が震えた声で尋ねる。マジで何も覚えてねぇのかよと言われ、{{ namae }}はこくりと頷いた。
「{{ namae }}が中々離してくれなかったからもうそのままで寝るかってなったんだ」
「ごめん……あと、敬一くんは裸で寝るタイプの人……?」
「は? あー……覚えてねぇと思うけど、ゲロ、吐いたから」
「うあぁぁああ……!」
自身の吐瀉物が自身の服と獅子神の服を汚したのは明白だった。取り敢えず洗濯したし今頃乾いているんじゃないかという獅子神の言葉は{{ namae }}の鼓膜を右から左へと抜けていく。ご迷惑をおかけしまして、と社会人になってから身に付いた言葉を口にする。獅子神は酒を飲みすぎんなよと声を掛ける。優しくて涙が出そうだ。今度洗剤送るねと言えば、お中元かよと笑われる。
「起きれるか? それとも寝とくか?」
「あ、うん。起きる」
獅子神はさっさとベッドから降りてクローゼットを開けている。獅子神の部屋だったのかと漸く理解した。獅子神が身支度を整えるのを、{{ namae }}はぼうっと眺める。美しいなと美術品に触れたときのことを思い出し、映画のワンシーンを見ているようだとも思えた。鍛えている肉体の美しさに思いを馳せ、いろんな服を着せたい気持ちにもなる。
「あと、その、歯形って……」
獅子神はぴたりと固まった。そのまま何も答えない。恐らく何と言おうかと言葉を探しているのだろう。だが{{ namae }}は獅子神のその反応で直ぐにすべてを理解した。{{ namae }}は頭を抱えて蹲り、悲痛そうな声を上げる。気に済んなよといつもの格好をした獅子神はそう言っていたが、歯形は痛々しそうに見える。何を思って噛んだのか覚えていないが、思い切り噛んだのだろう。身支度を整えた獅子神はシャツとズボンを{{ namae }}に貸してくれた。{{ namae }}はそれを着る。随分ゆったりとしている。体格を考えて、納得する。
「味噌汁とかなら飲めるか?」
「の、飲めるけど……あの、ガーゼとか、」
言いかけて{{ namae }}は口を閉ざした。どうせ村雨がいるのだ。何か勝手に手を施す前に村雨に診せた方が良いと気付いたのだ。恐らくそれは獅子神もそう思っているのだろう。取り敢えず飯食おうぜと腕を引かれて、{{ namae }}は付いて行くことにした。途中、そんな風に取り乱すことあるんだなと獅子神が笑う。{{ namae }}は恥ずかしくて俯いた。
真経津と村雨はもう既に食事を終えたようだった。おはようと挨拶をしてきた真経津に獅子神は挨拶を返す。わ、痛そう~! と真経津は少し楽しそうに言いながら、自身の首筋を指で示す。
「ねぇねぇ獅子神さん、本当に何もなかったの?」
「何にもねぇよ、ある訳ないだろ」
飯食ったのかと聞いて、食べたよと会話している。{{ namae }}はそれを横目に席に座る。未だずきずきと頭が痛む。貰ったスポーツドリンクをちょびちょびと飲みながら、向かいに座っている村雨を見た。村雨は食後のコーヒーを飲んでいる。
「あなた、昨夜獅子神に噛みついたそうだな」
「覚えてない」
素っ気ない言葉を{{ namae }}は突き返す。赤い目がちらりと{{ namae }}を見る。{{ namae }}は拗ねた子供のようにそっぽ向く。朝の弱い叶はまだ起きていない。真経津が戻って来て{{ namae }}の隣に座る。両肘をついて{{ namae }}を見た。
「{{ namae }}さんって、大胆だよねぇ」
くすくすと楽しそうに真経津が言う。
――フライパンで全員分の頭を殴れば記憶を飛ばせるだろうか
{{ namae }}は物騒なことを思いながら真経津を睨み返すしか出来なかった。
地獄絵図だ。確かに生命はかかっていないが、もう既に寝てしまった村雨が羨ましいと素直に思えた。
三人の前にあるのは所謂パーティドリンクと呼ばれるものだ。{{ namae }}が飲んだことないと言ったために叶と真経津が馬鹿みたいに買って来た。そしてそれを{{ namae }}は馬鹿みたいに片っ端から飲んだのだ。色鮮やかで少量ながらもアルコール度数の高いそれがどんどん無くなっていく様は、横で見ている獅子神の心配する度合と比例していく。摘まみがあった方が良いんじゃないかと台所に行って簡単な摘まみを作って、水やオレンジジュースと一緒に戻って来たらもう既に{{ namae }}は出来上がっていた。空き瓶の数を数えたくなくて、獅子神は視線をそっと逸らす。念のため吐いたときの袋を持ってきて良かったと思った。
真経津がおつまみだと喜んでいた。飲ませすぎだろ、と苦言を呈せば、美味しそうに飲んでたよと悪びれもなく返される。獅子神はソファに座り、ナッツを摘まんで食べる。
「ほら、{{ namae }}君。噂をすれば敬一君だぞ」
叶が楽しそうに笑いながら獅子神を指す。{{ namae }}は小さい酒瓶を置いた。それも空になっている。ふらふらと覚束ない足取りで獅子神の元へ来た。{{ namae }}の顔の血色が良い。首元まで赤い気さえする。けいいちくん、と涙混じりの声で{{ namae }}を呼ばれる。自分よりも年上なのに、幼い子供みたいだ。獅子神に抱き着き、すんすんと鼻を鳴らして泣いている。真経津と叶がニヤニヤとした顔で見ている。
「お前らな、そんなに飲ませ、っい゛……!?」
首筋に激痛が走った。獅子神は咄嗟に{{ namae }}の肩を掴み無理に引きはがす。血が出てるよと真経津の声が聞こえた。{{ namae }}の唇に赤色が付着している。噛まれたと遅れて理解する。
{{ namae }}の目からぼろぼろと大粒の涙が零れていく。あー、あー、と仕方なさそうな声を大袈裟に上げて獅子神は{{ namae }}の目元を指で拭う。何でこいつが泣くんだと思ったが、酔っ払いに言っても仕方ないことだ。涙かアルコールで潤んだ目が獅子神を見る。泣き上戸だったのかと凡そどうでも良いことをぼんやりと思った。
「あのね、僕、敬一くんとはすごく仲良しでいたい……」
普段からは想像できないようなことを普段からは想像できないような弱々しい声で言われ、獅子神はおう、としか返せない。獅子神が初めて{{ namae }}を見たときは、村雨や叶のように自身よりも格上の人間だと直ぐに理解できた。普段の所作などで生まれたときから一定以上の愛も金も得てきた人間だと察することが出来た。他の友人たちと同じ、生きている世界が違う人。しかも{{ namae }}は叶に近い、というより叶以上に気難しいタイプで彼自身が気に入った人としか喋らないタイプだ。業務的な連絡をしているときの心底つまらなさそうな、どうでも良さそうな顔は見ているこちらが緊張するほどだ。そんな人から一定以上の好意を抱かれているようで、ほっとする。
「きらいにならないで、」
零れた涙が獅子神の指を濡らす。{{ namae }}の言葉に獅子神は言葉を詰まらせた。愛も金も運さえも恵まれている人間に分類されるような人間に、何をそんなに怖がることがあるのか理解できない。普段村雨ほどではないが何を考えているのか解らない人が酒が入っているとはいえ、そんなに泣く程嫌なことがあるのか。
「、う゛」
{{ namae }}の両手が自身の口を塞いだ。獅子神はすぐに理解をした。ズボンのポケットに突っ込んでいた袋を取り出し広げようとしたが、間に合わなかった。
2023/05/28
目の裏辺りがつきん、と痛む。目を開くと遮光カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。見慣れない部屋の触り慣れない寝具に{{ namae }}は頭を擦りつける。何処か気持ち悪い。頭が重い。二日酔いだと判断を下す。身体が重たくて動きたくない。とく、とく、と聞こえる心音と感じる温かさにに{{ namae }}はほうと息を吐いた。懐かしい、温かな記憶を指先でなぞる。すん、と鼻で息をする。甘い香りはしなかった、が、清潔そうな匂いと良いにおいがする。滑らかな、温かいものに触れて{{ namae }}は心が安らぐのを感じた。うとうととしかけたのに、違和感に目を開く。顔を上げると金の髪が見えた。獅子神が、眠っている。{{ namae }}自身は獅子神を丁度腹部に腕を回し、抱き枕のようにして眠っていた。
一気に血の気が引いた。そろそろと離れ、自身を検めると下着は履いていた。逆に言えば下着しか身につけていない。獅子神を見ると彼は上半身裸であった。{{ namae }}はぎょっとした。白い首筋にくっきりとした歯形がある。歯のへこみ周辺は炎症を起こしているのか赤くなってしまっている。恐らく真新しい怪我だ。あと甘噛みとかではなく、思い切り噛んでいる。村雨でなくてもそれくらいは解る。多分、その犯人が自分だと{{ namae }}は確信めいたものを得ている。叶程の観察眼がなくとも、{{ namae }}は今までの経験上自分であることを知っている。
もしや、まさか、最悪な手を選んでしまったのだろうか。
{{ namae }}は獅子神に対して好意を抱いている。今の関係である友達よりも親しい仲になりたいと常々思っている。そのために獅子神だけは名前で呼ぶようになったのだが、親しい友達どまりである。
記憶にはないが、境界をぽんと飛び越えてしまったのだろうか。少し記憶をたどろうとするが、なにも残っていない。ちょっと酒を飲み過ぎて、世界が終わるような心地がして、意味の解らぬ言葉を呪詛のように呻きながら泣いていた記憶もある。隣にいた真経津や叶は楽しそうな顔をしていたのも覚えている。友達の頭を殴ってその部分の記憶を取り除けないかなあと現実逃避をした。皆覚えていないと良いなぁと夢を描く。
生憎目の前の状況は何も変わっていない。何度目をこすっても、眠っている獅子神は消えやしない。自身もパンツ一丁であることは変わらない。
もしかしてこれが夢なのかも、と思いかけた頃、獅子神が身動ぎをする。{{ namae }}はびっくりして息をするのも忘れた。ゆっくりと瞼が押し上げられる。何度か瞬きを繰り返し、眉間にきゅっと皺を寄せさせる。初めて見る表情だ。青い目が{{ namae }}を捉え、ふわりと柔らかくなる。
「おはよ、大丈夫か、具合、」
「ごめんっ!」
{{ namae }}は素早く土下座した。は、と獅子神がぽかんとした音を落とす。{{ namae }}は額を高級そうな寝具に擦り付ける。顔を上げろよと気遣う声と共に肩を掴まれ上体を起こされる。ぐわん、と脳味噌が揺れ、思わず{{ namae }}は顔を顰めさせた。悪いと獅子神が言う。獅子神の大きな手が{{ namae }}の手にスポーツドリンクの入ったペットボトルを握らせる。優しい、と{{ namae }}は胸がじんと温かくなる。覚えてないのかと獅子神に問われ、{{ namae }}は何も覚えていないと項垂れる。そうか、と獅子神の静かな声が落ちる。
「もしかなくても、僕、敬一君に乱暴とかした?」
「え? ……いや、何もねぇよ。そもそも酔っ払いの、しかも{{ namae }}が誰か殴ろうとしたらオレは抑え込めるだろ?」
確かにそうだ。日々趣味で鍛えている獅子神と、特に鍛えることや運動をしない{{ namae }}とでは筋力の差が明らかにある。{{ namae }}自身が描いている乱暴と、獅子神が言う乱暴に少しの差はある気がするが獅子神のいうことは正しい。じゃあ何で同じベッドに、と{{ namae }}が震えた声で尋ねる。マジで何も覚えてねぇのかよと言われ、{{ namae }}はこくりと頷いた。
「{{ namae }}が中々離してくれなかったからもうそのままで寝るかってなったんだ」
「ごめん……あと、敬一くんは裸で寝るタイプの人……?」
「は? あー……覚えてねぇと思うけど、ゲロ、吐いたから」
「うあぁぁああ……!」
自身の吐瀉物が自身の服と獅子神の服を汚したのは明白だった。取り敢えず洗濯したし今頃乾いているんじゃないかという獅子神の言葉は{{ namae }}の鼓膜を右から左へと抜けていく。ご迷惑をおかけしまして、と社会人になってから身に付いた言葉を口にする。獅子神は酒を飲みすぎんなよと声を掛ける。優しくて涙が出そうだ。今度洗剤送るねと言えば、お中元かよと笑われる。
「起きれるか? それとも寝とくか?」
「あ、うん。起きる」
獅子神はさっさとベッドから降りてクローゼットを開けている。獅子神の部屋だったのかと漸く理解した。獅子神が身支度を整えるのを、{{ namae }}はぼうっと眺める。美しいなと美術品に触れたときのことを思い出し、映画のワンシーンを見ているようだとも思えた。鍛えている肉体の美しさに思いを馳せ、いろんな服を着せたい気持ちにもなる。
「あと、その、歯形って……」
獅子神はぴたりと固まった。そのまま何も答えない。恐らく何と言おうかと言葉を探しているのだろう。だが{{ namae }}は獅子神のその反応で直ぐにすべてを理解した。{{ namae }}は頭を抱えて蹲り、悲痛そうな声を上げる。気に済んなよといつもの格好をした獅子神はそう言っていたが、歯形は痛々しそうに見える。何を思って噛んだのか覚えていないが、思い切り噛んだのだろう。身支度を整えた獅子神はシャツとズボンを{{ namae }}に貸してくれた。{{ namae }}はそれを着る。随分ゆったりとしている。体格を考えて、納得する。
「味噌汁とかなら飲めるか?」
「の、飲めるけど……あの、ガーゼとか、」
言いかけて{{ namae }}は口を閉ざした。どうせ村雨がいるのだ。何か勝手に手を施す前に村雨に診せた方が良いと気付いたのだ。恐らくそれは獅子神もそう思っているのだろう。取り敢えず飯食おうぜと腕を引かれて、{{ namae }}は付いて行くことにした。途中、そんな風に取り乱すことあるんだなと獅子神が笑う。{{ namae }}は恥ずかしくて俯いた。
真経津と村雨はもう既に食事を終えたようだった。おはようと挨拶をしてきた真経津に獅子神は挨拶を返す。わ、痛そう~! と真経津は少し楽しそうに言いながら、自身の首筋を指で示す。
「ねぇねぇ獅子神さん、本当に何もなかったの?」
「何にもねぇよ、ある訳ないだろ」
飯食ったのかと聞いて、食べたよと会話している。{{ namae }}はそれを横目に席に座る。未だずきずきと頭が痛む。貰ったスポーツドリンクをちょびちょびと飲みながら、向かいに座っている村雨を見た。村雨は食後のコーヒーを飲んでいる。
「あなた、昨夜獅子神に噛みついたそうだな」
「覚えてない」
素っ気ない言葉を{{ namae }}は突き返す。赤い目がちらりと{{ namae }}を見る。{{ namae }}は拗ねた子供のようにそっぽ向く。朝の弱い叶はまだ起きていない。真経津が戻って来て{{ namae }}の隣に座る。両肘をついて{{ namae }}を見た。
「{{ namae }}さんって、大胆だよねぇ」
くすくすと楽しそうに真経津が言う。
――フライパンで全員分の頭を殴れば記憶を飛ばせるだろうか
{{ namae }}は物騒なことを思いながら真経津を睨み返すしか出来なかった。
地獄絵図だ。確かに生命はかかっていないが、もう既に寝てしまった村雨が羨ましいと素直に思えた。
三人の前にあるのは所謂パーティドリンクと呼ばれるものだ。{{ namae }}が飲んだことないと言ったために叶と真経津が馬鹿みたいに買って来た。そしてそれを{{ namae }}は馬鹿みたいに片っ端から飲んだのだ。色鮮やかで少量ながらもアルコール度数の高いそれがどんどん無くなっていく様は、横で見ている獅子神の心配する度合と比例していく。摘まみがあった方が良いんじゃないかと台所に行って簡単な摘まみを作って、水やオレンジジュースと一緒に戻って来たらもう既に{{ namae }}は出来上がっていた。空き瓶の数を数えたくなくて、獅子神は視線をそっと逸らす。念のため吐いたときの袋を持ってきて良かったと思った。
真経津がおつまみだと喜んでいた。飲ませすぎだろ、と苦言を呈せば、美味しそうに飲んでたよと悪びれもなく返される。獅子神はソファに座り、ナッツを摘まんで食べる。
「ほら、{{ namae }}君。噂をすれば敬一君だぞ」
叶が楽しそうに笑いながら獅子神を指す。{{ namae }}は小さい酒瓶を置いた。それも空になっている。ふらふらと覚束ない足取りで獅子神の元へ来た。{{ namae }}の顔の血色が良い。首元まで赤い気さえする。けいいちくん、と涙混じりの声で{{ namae }}を呼ばれる。自分よりも年上なのに、幼い子供みたいだ。獅子神に抱き着き、すんすんと鼻を鳴らして泣いている。真経津と叶がニヤニヤとした顔で見ている。
「お前らな、そんなに飲ませ、っい゛……!?」
首筋に激痛が走った。獅子神は咄嗟に{{ namae }}の肩を掴み無理に引きはがす。血が出てるよと真経津の声が聞こえた。{{ namae }}の唇に赤色が付着している。噛まれたと遅れて理解する。
{{ namae }}の目からぼろぼろと大粒の涙が零れていく。あー、あー、と仕方なさそうな声を大袈裟に上げて獅子神は{{ namae }}の目元を指で拭う。何でこいつが泣くんだと思ったが、酔っ払いに言っても仕方ないことだ。涙かアルコールで潤んだ目が獅子神を見る。泣き上戸だったのかと凡そどうでも良いことをぼんやりと思った。
「あのね、僕、敬一くんとはすごく仲良しでいたい……」
普段からは想像できないようなことを普段からは想像できないような弱々しい声で言われ、獅子神はおう、としか返せない。獅子神が初めて{{ namae }}を見たときは、村雨や叶のように自身よりも格上の人間だと直ぐに理解できた。普段の所作などで生まれたときから一定以上の愛も金も得てきた人間だと察することが出来た。他の友人たちと同じ、生きている世界が違う人。しかも{{ namae }}は叶に近い、というより叶以上に気難しいタイプで彼自身が気に入った人としか喋らないタイプだ。業務的な連絡をしているときの心底つまらなさそうな、どうでも良さそうな顔は見ているこちらが緊張するほどだ。そんな人から一定以上の好意を抱かれているようで、ほっとする。
「きらいにならないで、」
零れた涙が獅子神の指を濡らす。{{ namae }}の言葉に獅子神は言葉を詰まらせた。愛も金も運さえも恵まれている人間に分類されるような人間に、何をそんなに怖がることがあるのか理解できない。普段村雨ほどではないが何を考えているのか解らない人が酒が入っているとはいえ、そんなに泣く程嫌なことがあるのか。
「、う゛」
{{ namae }}の両手が自身の口を塞いだ。獅子神はすぐに理解をした。ズボンのポケットに突っ込んでいた袋を取り出し広げようとしたが、間に合わなかった。
2023/05/28
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