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Novel pkmn 今日はえいえんの最初の日(シンオウでウォロと再会/完結)
1 / 2 / 3 / 4 tt5 !+さよならの練習を(男主とオフェンスが過ごす真夏の話/現パロ/完結)
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さよならの練習を02
オフェンス{{ namae }}はイライと別れて借りている部屋へと戻った。玄関を開けると熱された空気が襲い掛かる。融けてしまいそうなほどの熱に思わず{{ namae }}は顔を顰めさせる。
クーラーを点けておけば良かったと{{ namae }}は何度目かの後悔をする。玄関のドアを閉めるとセミの声が小さくなる。多分近くの電柱にでもくっついているのだろう。古いリモコンに手を伸ばして、スイッチを押す。電子音が短く響いた後に生ぬるい風が吹き出した。次第に涼しくなるだろう。
雑誌や衣類があちらこちらに飛んでいる。{{ namae }}は散らかりに散らかった部屋を見た。どうしてこんなに散らかっているのだっけ、と暑さでろくに動かない脳味噌が呟く。片付けなければならない、不要なものは破棄しなければならない。そんな考えのもと、{{ namae }}は動き出す。押し入れからビニル紐を取り出す。何処かの風景写真が表紙となった旅行雑誌、返せずにいるラグビー特集のスポーツ雑誌、美味しそうな料理が表紙の料理雑誌、ついてくる鞄などを目的として購入した雑誌。自由にあちこち寝転んでる雑誌たちを拾い上げて重ねていく。ある程度詰めればそれをビニル紐で括った。幾つかの雑誌の束を脇へ退ける。散乱した部屋を見る。もういっそ衣類は全て拾って洗濯機に入れれば良いのだろうか。そんな考えが過る。ジジッ、とセミが呻き声を出す。窓の外でカラスが過った。
季節外れの長袖シャツを拾うとゴム風船が詰まった袋が落ちていた。そう言えばこの風船もウィリアムが去年買ってきたものだ。男二人で風船を馬鹿みたいに膨らませて部屋に浮かばせる。ただそれだけで楽しかった。
{{ namae }}は赤い風船を取り出した。両手で引っ張るとそんなに劣化していないようで良く伸びる。押入にしまい込んでいた、ヘリウムガスが詰まった缶を取り出す。細い管をつけてゴム風船を膨らませた。口を結んで手を離すと、ヘリウムガスをパンパンに詰め込んだ風船は天井に頭を擦り付けさせている。赤い風船はクーラーの風に吹かれ窓際まで移動している。紐で括っておけば良かったかもしれない。尤も今の状態で窓を開くなんてことはしないけれど。
そうだ、と{{ namae }}がぽつりと呟く。セミたちが大合唱をし始めた。それは{{ namae }}がこれからすることに関して背中を押しているようだった。
{{ namae }}は雑誌を括っていたビニル紐を取り出す。自身の身長の半分ほどの長さを切り出し、先端に輪を作る。正しい結び方が解らず、固結びをした。輪を作った方とは反対の部分は、少し迷ったうちにカーテンレールに括りつけた。少し離れてだらんと垂れ下がったビニル紐を見て、笑いが零れる。{{ namae }}はその足元に椅子を持ってきた。椅子の上に立つと、自分の顔より高い場所に縄で作った輪がある。{{ namae }}は破顔させた。その輪に頭を突っ込ませ、椅子を蹴って倒す。がくんと身体が重力によって落ちるが床に足をつけることはない。急激に酸素がなくなる。じわじわと視界が暗くなっていく。耳の側の血管がごうごうと音を立てる。ああそう言えば、中身をぶちまけて死ぬんだっけなと何処か他人事のように考える。大家には悪いことをしたなと思ってもないことが浮かんでやがて轟音に掻き消される。意識が不明瞭になっていく。何かが浮かんだが{{ namae }}が認識する前に消える。
ぶちん、と何かがちぎれる音が響いた。
落ちる感覚。足が滑る。重力により後ろに倒れていく。{{ namae }}が何かを思う間もなく、後頭部を強かに打った。視界が暗転する。セミの声が遠ざかり、やがて消えた。
「――い、おい、大丈夫か?」
誰かの声がする。緩やかに{{ namae }}は意識を浮上させた。瞬きをすると天井が見える。眩しくて何度か瞬きをした。家の外にいるセミたちが腹を抱えて自身を嘲笑っている。打ち付けた後頭部を擦りながら{{ namae }}はゆっくりと上体を起こす。手元にちぎれたビニル紐が力なくうなだれている。ああ失敗したのか。どうしようもない無力感を覚えてため息を吐く。クーラーの涼しい空気が{{ namae }}の汗ばんだ項を撫でる。
「大丈夫か?」
はっきりと、声が聞こえた。{{ namae }}はぎこちない動きで声のする方を振り返る。天井に人が浮かんでいる。あるはずのないことが眼前で展開されている。
「ウィリ、アム……?」
喉が、からからに乾いていた。紡ぎたい言葉は喉に引っかかりながらも音となって口から吐き出される。セミがぴたりと笑うのをやめた。アパートの近くを走る車のエンジン音が僅かに鼓膜を震わせる。
{{ namae }}のよく知ったウィリアムは普段と変わりない笑顔を浮かべさせ、返事をした。見たかった顔だ。聞きたかった声だ。
――ただ、彼はあの赤い風船のように天井に頭を擦りつけていた。
2020/04/20
2022/06/07
{{ namae }}はイライと別れて借りている部屋へと戻った。玄関を開けると熱された空気が襲い掛かる。融けてしまいそうなほどの熱に思わず{{ namae }}は顔を顰めさせる。
クーラーを点けておけば良かったと{{ namae }}は何度目かの後悔をする。玄関のドアを閉めるとセミの声が小さくなる。多分近くの電柱にでもくっついているのだろう。古いリモコンに手を伸ばして、スイッチを押す。電子音が短く響いた後に生ぬるい風が吹き出した。次第に涼しくなるだろう。
雑誌や衣類があちらこちらに飛んでいる。{{ namae }}は散らかりに散らかった部屋を見た。どうしてこんなに散らかっているのだっけ、と暑さでろくに動かない脳味噌が呟く。片付けなければならない、不要なものは破棄しなければならない。そんな考えのもと、{{ namae }}は動き出す。押し入れからビニル紐を取り出す。何処かの風景写真が表紙となった旅行雑誌、返せずにいるラグビー特集のスポーツ雑誌、美味しそうな料理が表紙の料理雑誌、ついてくる鞄などを目的として購入した雑誌。自由にあちこち寝転んでる雑誌たちを拾い上げて重ねていく。ある程度詰めればそれをビニル紐で括った。幾つかの雑誌の束を脇へ退ける。散乱した部屋を見る。もういっそ衣類は全て拾って洗濯機に入れれば良いのだろうか。そんな考えが過る。ジジッ、とセミが呻き声を出す。窓の外でカラスが過った。
季節外れの長袖シャツを拾うとゴム風船が詰まった袋が落ちていた。そう言えばこの風船もウィリアムが去年買ってきたものだ。男二人で風船を馬鹿みたいに膨らませて部屋に浮かばせる。ただそれだけで楽しかった。
{{ namae }}は赤い風船を取り出した。両手で引っ張るとそんなに劣化していないようで良く伸びる。押入にしまい込んでいた、ヘリウムガスが詰まった缶を取り出す。細い管をつけてゴム風船を膨らませた。口を結んで手を離すと、ヘリウムガスをパンパンに詰め込んだ風船は天井に頭を擦り付けさせている。赤い風船はクーラーの風に吹かれ窓際まで移動している。紐で括っておけば良かったかもしれない。尤も今の状態で窓を開くなんてことはしないけれど。
そうだ、と{{ namae }}がぽつりと呟く。セミたちが大合唱をし始めた。それは{{ namae }}がこれからすることに関して背中を押しているようだった。
{{ namae }}は雑誌を括っていたビニル紐を取り出す。自身の身長の半分ほどの長さを切り出し、先端に輪を作る。正しい結び方が解らず、固結びをした。輪を作った方とは反対の部分は、少し迷ったうちにカーテンレールに括りつけた。少し離れてだらんと垂れ下がったビニル紐を見て、笑いが零れる。{{ namae }}はその足元に椅子を持ってきた。椅子の上に立つと、自分の顔より高い場所に縄で作った輪がある。{{ namae }}は破顔させた。その輪に頭を突っ込ませ、椅子を蹴って倒す。がくんと身体が重力によって落ちるが床に足をつけることはない。急激に酸素がなくなる。じわじわと視界が暗くなっていく。耳の側の血管がごうごうと音を立てる。ああそう言えば、中身をぶちまけて死ぬんだっけなと何処か他人事のように考える。大家には悪いことをしたなと思ってもないことが浮かんでやがて轟音に掻き消される。意識が不明瞭になっていく。何かが浮かんだが{{ namae }}が認識する前に消える。
ぶちん、と何かがちぎれる音が響いた。
落ちる感覚。足が滑る。重力により後ろに倒れていく。{{ namae }}が何かを思う間もなく、後頭部を強かに打った。視界が暗転する。セミの声が遠ざかり、やがて消えた。
「――い、おい、大丈夫か?」
誰かの声がする。緩やかに{{ namae }}は意識を浮上させた。瞬きをすると天井が見える。眩しくて何度か瞬きをした。家の外にいるセミたちが腹を抱えて自身を嘲笑っている。打ち付けた後頭部を擦りながら{{ namae }}はゆっくりと上体を起こす。手元にちぎれたビニル紐が力なくうなだれている。ああ失敗したのか。どうしようもない無力感を覚えてため息を吐く。クーラーの涼しい空気が{{ namae }}の汗ばんだ項を撫でる。
「大丈夫か?」
はっきりと、声が聞こえた。{{ namae }}はぎこちない動きで声のする方を振り返る。天井に人が浮かんでいる。あるはずのないことが眼前で展開されている。
「ウィリ、アム……?」
喉が、からからに乾いていた。紡ぎたい言葉は喉に引っかかりながらも音となって口から吐き出される。セミがぴたりと笑うのをやめた。アパートの近くを走る車のエンジン音が僅かに鼓膜を震わせる。
{{ namae }}のよく知ったウィリアムは普段と変わりない笑顔を浮かべさせ、返事をした。見たかった顔だ。聞きたかった声だ。
――ただ、彼はあの赤い風船のように天井に頭を擦りつけていた。
2020/04/20
2022/06/07
クーラーを点けておけば良かったと{{ namae }}は何度目かの後悔をする。玄関のドアを閉めるとセミの声が小さくなる。多分近くの電柱にでもくっついているのだろう。古いリモコンに手を伸ばして、スイッチを押す。電子音が短く響いた後に生ぬるい風が吹き出した。次第に涼しくなるだろう。
雑誌や衣類があちらこちらに飛んでいる。{{ namae }}は散らかりに散らかった部屋を見た。どうしてこんなに散らかっているのだっけ、と暑さでろくに動かない脳味噌が呟く。片付けなければならない、不要なものは破棄しなければならない。そんな考えのもと、{{ namae }}は動き出す。押し入れからビニル紐を取り出す。何処かの風景写真が表紙となった旅行雑誌、返せずにいるラグビー特集のスポーツ雑誌、美味しそうな料理が表紙の料理雑誌、ついてくる鞄などを目的として購入した雑誌。自由にあちこち寝転んでる雑誌たちを拾い上げて重ねていく。ある程度詰めればそれをビニル紐で括った。幾つかの雑誌の束を脇へ退ける。散乱した部屋を見る。もういっそ衣類は全て拾って洗濯機に入れれば良いのだろうか。そんな考えが過る。ジジッ、とセミが呻き声を出す。窓の外でカラスが過った。
季節外れの長袖シャツを拾うとゴム風船が詰まった袋が落ちていた。そう言えばこの風船もウィリアムが去年買ってきたものだ。男二人で風船を馬鹿みたいに膨らませて部屋に浮かばせる。ただそれだけで楽しかった。
{{ namae }}は赤い風船を取り出した。両手で引っ張るとそんなに劣化していないようで良く伸びる。押入にしまい込んでいた、ヘリウムガスが詰まった缶を取り出す。細い管をつけてゴム風船を膨らませた。口を結んで手を離すと、ヘリウムガスをパンパンに詰め込んだ風船は天井に頭を擦り付けさせている。赤い風船はクーラーの風に吹かれ窓際まで移動している。紐で括っておけば良かったかもしれない。尤も今の状態で窓を開くなんてことはしないけれど。
そうだ、と{{ namae }}がぽつりと呟く。セミたちが大合唱をし始めた。それは{{ namae }}がこれからすることに関して背中を押しているようだった。
{{ namae }}は雑誌を括っていたビニル紐を取り出す。自身の身長の半分ほどの長さを切り出し、先端に輪を作る。正しい結び方が解らず、固結びをした。輪を作った方とは反対の部分は、少し迷ったうちにカーテンレールに括りつけた。少し離れてだらんと垂れ下がったビニル紐を見て、笑いが零れる。{{ namae }}はその足元に椅子を持ってきた。椅子の上に立つと、自分の顔より高い場所に縄で作った輪がある。{{ namae }}は破顔させた。その輪に頭を突っ込ませ、椅子を蹴って倒す。がくんと身体が重力によって落ちるが床に足をつけることはない。急激に酸素がなくなる。じわじわと視界が暗くなっていく。耳の側の血管がごうごうと音を立てる。ああそう言えば、中身をぶちまけて死ぬんだっけなと何処か他人事のように考える。大家には悪いことをしたなと思ってもないことが浮かんでやがて轟音に掻き消される。意識が不明瞭になっていく。何かが浮かんだが{{ namae }}が認識する前に消える。
ぶちん、と何かがちぎれる音が響いた。
落ちる感覚。足が滑る。重力により後ろに倒れていく。{{ namae }}が何かを思う間もなく、後頭部を強かに打った。視界が暗転する。セミの声が遠ざかり、やがて消えた。
「――い、おい、大丈夫か?」
誰かの声がする。緩やかに{{ namae }}は意識を浮上させた。瞬きをすると天井が見える。眩しくて何度か瞬きをした。家の外にいるセミたちが腹を抱えて自身を嘲笑っている。打ち付けた後頭部を擦りながら{{ namae }}はゆっくりと上体を起こす。手元にちぎれたビニル紐が力なくうなだれている。ああ失敗したのか。どうしようもない無力感を覚えてため息を吐く。クーラーの涼しい空気が{{ namae }}の汗ばんだ項を撫でる。
「大丈夫か?」
はっきりと、声が聞こえた。{{ namae }}はぎこちない動きで声のする方を振り返る。天井に人が浮かんでいる。あるはずのないことが眼前で展開されている。
「ウィリ、アム……?」
喉が、からからに乾いていた。紡ぎたい言葉は喉に引っかかりながらも音となって口から吐き出される。セミがぴたりと笑うのをやめた。アパートの近くを走る車のエンジン音が僅かに鼓膜を震わせる。
{{ namae }}のよく知ったウィリアムは普段と変わりない笑顔を浮かべさせ、返事をした。見たかった顔だ。聞きたかった声だ。
――ただ、彼はあの赤い風船のように天井に頭を擦りつけていた。
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2022/06/07
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R-15ですので中学生を含む十五歳以下の方は閲覧をお控えください。前触れも無く悲恋、暴力的表現、流血、性描写、倫理的問題言動、捏造、オリジナル設定、キャラ崩壊等を含みます。ネタバレに関してはほぼ配慮してません。夢主≠主人公です。
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